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後発国の産業化は先進国の産業化過程をモデルにし,自国にあう特定の制度的手段と産業化の進行する知的環境,即ち企業家精神の下で発展しなければならない。ここで論ずる企業家精神はシュムペーターがいう技術的イノベーションより社会的イノベーションが重要である。言い換えれば,後発国においては,エリートが社会的承認(社会的評価)で伝統的なビジネス観をやぶり,近代化に接するか否かにより,企業家活動の存否が決まることになるとも言えよう。小論では後発国の近代化(工業化)における企業家活動に関して,先進国,特にヨーロッパの諸国との関係を日本に焦点をあてて分析したが,ヨーロッパとぱ異なる政治体制,文化,歴史が存在したのでその主体(企業家)の活動も異なっていることが分かる。即ち,独立自由な個人間の利害関係の集積としての西欧式の市民社会の成立を待つことなく,工業化を急いだ東洋の後発国日本では国家の経済的富強の達成という実業家の経営理念は,社会的イノベーションによって行われたのであるといえる。これはある意味では西欧におけるプロテスタント的エートスに代替してきたのであり,このような企業家活動は東洋の後発国日本の工業化にとっては必然的な結果であるとしなければならない。 |