北海道家庭学校寮長藤田俊二の中期日誌における寮生理解について -対話的コミュニケーションの実践とその意義-
Jazyk: | japonština |
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Rok vydání: | 2022 |
Předmět: | |
Zdroj: | 宮崎国際大学教育学部紀要 教育科学論集. 9:15-102 |
ISSN: | 2188-7896 |
Popis: | 本稿は、北海道家庭学校寮長藤田俊二(1932-2014,昭和 7-平成 26)による在任中(1963-1993)の膨大な日誌(147 名分)のうち、中期日誌に属する 3 名の記述と、それに添付された、その時々の生徒作文とをとり上げ、藤田はどのように生徒理解したか、その諸相を明らかにし、その上で、どのようなコミュニケーションが示されていたかを分析した。その結果、以下の点が明らかになった。1)藤田が課した生徒作文の題目数は、全期間で 221 件、内訳は初期(1965.5.10-1969.3):16、中期(1969.4-1983.11):173、後期(1983.12-1990.3):32 であった。その題目領域は、家族のこと、自分の長短、将来像、1年の振り返り、寮生のこと、などであった。これらによって、藤田は、寮生一人一人に問いかけ、その内面にむけた他者理解を試みた。2)もっとも多くの生徒作文題目を設定した中期日誌のうち、3 名の日誌には、添付された生徒作文とともに、生徒と藤田とのコミュニケーションが展開し、“対話”を特徴づける相互行為(主題設定、両者の対等性、問いかけと応答)が展開していた。3)その場合、対話的コミュニケーションを通じて、3 名寮生それぞれの個性的世界を藤田は記述し、肯定的な理解を示していた。4)このような日誌は、藤田自身のかれ自身の単独の努力によって作成されているが、その対話的な様式そのものは、けっしてかれの自身の発案によるのではなかった。礼拝堂での校長、寮長との対話、朗読会での生徒の自己自身との対話、自然環境との交流、といった伝統的習慣とともに成り立っている。以上 1)-4)の対話的コミュニケーションを示した日誌は、M.ヴェーバーの「共同体」にかかわる二概念で把握すれば、北海道家庭学校のメンバー構成の成立にかかわって、二つの特徴を示していた。第一に、寮長と一寮生との関係のみならず、他の寮生も含めた自発的な「結社」の人間関係の絆を導き入れていること、第二に、それにもかかわらず、同時に、所属強制的な共同体である「アンシュタルト」としての教育施設という基本的性格も保持し、人間形成における「強制」という契機の重要性を確認していたこと。こうして藤田の中期日誌は、家庭学校が寮生各人に対して自由と強制という両面性を示した教育活動によって成立する教育共同体として特徴づけられることを、日々の実践記録としての基本的性格を保持して根拠づけていた。 |
Databáze: | OpenAIRE |
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