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近年のアジア域内貿易・投資の拡大によって,アジア諸国間の経済的なリンケージはますます緊密になっている.実体面での経済統合が一段と深化し,通貨同盟や域内通貨協調への関心も高まっている.最適通貨圏の理論は通貨同盟形成のための複数の経済的条件を提示しているが,それら条件の中で最も重視されているのが各国間の景気循環の連動性である.これまで数多くの研究が景気循環の連動性という指標を用いて最適な通貨圏の地理的範囲を特定する実証分析を行っている.さらに,最近注目を集めているのは景気循環の連動性の決定要因を分析する実証研究である.先行研究では複数の決定要因が分析の対象となっているが,その中で最も重視されているのが産業間貿易,産業内貿易,産業構造の類似性,そして金融統合の4 つである.本論文はアジア諸国を対象として,2 国間の景気循環の連動性を決定する要因をより全面的に検証するために,従来の要因である産業間貿易指数,産業内貿易指数,産業構造の類似性指数,と金融統合指数に加えて,為替レートの変動性指数を説明変数としてGMM?IV による実証分析を行なっている.本論文の主要な分析結果は次の5 つである.第1 に,産業間貿易は景気循環の連動性に有意なプラスの影響を与える傾向にあるが,その影響は安定していない.第2 に,産業内貿易は景気循環の連動性に常に頑健な正の影響を及ばしている.第3 に,2 国間の産業構造の類似性は景気循環の連動性に有意にプラスの影響を与えるが,この結果は安定していないという結果が得られた.第4 に,2 国間の金融統合は景気循環の連動性に有意に負の影響を与えている.最後に,2 国間の為替レートの変動性は景気循環の連動性に常に頑健な負の影響を与えている. |