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本稿では、命令文に後接する文末調ナ・ネ・ヨについて、命令形単独使用の場合(ø) と比較しつつ、その文タイプとの共起関係、音調、意味・機能を記述することを試みる。当該形式の意味・機能面での特徴のみをまとめると次のようになる。ø: 特に前提のない状況のもとでの中立的な行為指示として使用可。当該動作の実行を話し手が希望するか否か、また聞き手が希望するか否かで4つの組み合わせがあり、最も用法が広い。ナ:当該動作が遂行されることを話し手が強く希望していることを表明する形式であり、その動作を実行することは聞き手の負担になる、聞き手の意向にそぐわないといった状況把握を前提とする。話し手の立場を聞き手の下に置き、丁寧な(子どもに対してはやさしい)命令・依頼になる。聞き手がかたくなに断るといった状況では、「嘆願」 に近い意味になることもある。ネ:当該動作を行うことは聞き手の責任として確定しているという前提のもとで、聞き手が当該動作を間違いなく実行するよう、聞き手に確認し、念を押す形式である。聞き手に動作の実行を放棄する可能性があり、聞き手が動作の実行を放棄した場合には話し手や第三者に迷惑がおよぶという状況のもとでの強い命令を表す。ヨ:話し手が、さまざまな状況を根拠に聞き手が動作を(うまく)実行するかどうかを危倶しており、聞き手がその動作を必ず実行するよう指示する場合に用いられる。ナ・ネ・ヨ3者は、その意味・機能を互いに分担しつつ対立しているものの、ナやネについてはその意味特徴を個別的に指定すべき点も多く、整然とした体系を構成するものではないように思われる。 |