シュウエキ ヒヨウカン・シサン フサイカン ニ カンスル フタツ ノ ケントウ カダイ (1)

Jazyk: japonština
Rok vydání: 2017
Předmět:
Zdroj: 三田商学研究. 60(5):37-53
ISSN: 0544-571X
Popis: 今日, 会計の議論は, 収益費用観と資産負債観とを座標軸としてなされていると言ってよいであろう。この収益費用観・資産負債観という枠組が, 脚光を浴びるに至ったのは, 制度的には, 我が国の場合, 売買目的有価証券について売却時価評価が取り入れられたことに淵源している。しかし, この概念は, その内容が曖昧模糊としているし, かつ, 多様な概念と結び付き得るので, 会計のどの領域にも援用可能であるかのようにみなされている。つまり, 売買目的有価証券の時価評価のような貸借対照表評価の領域についてのみならず, いわゆる負債性引当金のような擬制負債にかかわる貸借対照表能力の領域についても, さらには, 資産除去債務のようにリスク・実態表示目的への計算目的の転換が必要な領域についても, 収益費用観・資産負債観という枠組で説明されているのである。しかし, それらの領域は, 本当に, この枠組によって, 合理的に説明できるのであろうか。その点, 筆者は大きな疑問を覚えている。そこで, 収益費用観・資産負債観という枠組を援用できる領域を限定する, という作業がどうしても必要になる。この点が, 収益費用観・資産負債観の研究に関する第1の課題になる。 結論的には, 収益費用観・資産負債観は, 売買目的有価証券の時価評価にみられるように, フローとストックとの関係にかかわる計算方式として, 会計上の評価規約の規定に関して, 重要な一翼を担っていると筆者は考えている。もっとも, 評価規約の規定要因については, 諸学説によってさまざまであろう。したがって, そうした考え方を整理することによって諸学説を比較する枠組を構築しつつ, 各学説において収益費用観・資産負債観が果たしている役割を明らかにすることが, 収益費用観・資産負債観に関する第2の研究課題になる。 本稿は, このふたつの研究課題につき, 4回に分けて, 筆者の考えの概要を述べるが, 本号では, まず特別修繕引当金を取り上げ, 収益費用観・資産負債観という枠組には関与しないことを明らかにしたい。すなわち, 一般的には, こうした擬制負債が生じたことの原因を, フローを優先する計算方式としての収益費用観に求め, それを, ストックを優先する計算方式としての資産負債観に転換することによって解決できる, という道筋が想定されているようである。それに対して, この経済事象を修繕事象とみなしている点に, 問題があると筆者は考えている。つまり, 修繕がなされるためには, その以前に損傷がなければならないはずであるが, これまでの会計においては, 損傷という事実が認識されてこなかった。そのことに, 問題の根源があるのである。したがって, いわゆる修繕事象を損傷事象を起点として再構成することにより解決できる, というのが筆者の結論である。
論文
Databáze: OpenAIRE