タービン翼の伝熱特性に関する研究

Jazyk: japonština
Rok vydání: 2015
Popis: ガスタービンの効率向上にはタービン翼入口ガス温度を上昇させる必要があるため,このような高温環境で使用されるタービン翼は材料を耐熱温度に変更するだけでは対応できず,内部から空気で冷却する内部冷却構造を持った冷却翼となっているが、現状タービン翼のメタル温度は,タービン材料のクリープ強度や酸化特性を考慮した耐熱温度にほぼ近づきつつある.そのため,今後のガスタービン効率の更なる向上には,燃焼ガスからタービン翼への正確な入熱量の予測とタービン翼内部の複雑な冷却構造の伝熱特性の把握が必要である. タービン翼外面の複雑な伝熱現象を把握するために,これまで翼列試験による熱伝達率の計測やRANSによるCFD解析研究が実施されているが,翼外面の加・減速のある流れ場における境界層の層流から乱流への遷移を精度良く予測するのが困難なため,熱伝達率の予測精度は必ずしも高いとはいえない. 近年,計算機環境の向上により,境界層を含む壁面近傍の流れ場を精度良く解析することが出来るLES解析の翼外面流れへの適用が試みられているが,内部に冷却構造を持つ翼厚の大きなタービン動翼に対し,翼断面形状の違いによる,翼周りの速度分布の差異が翼面熱伝達率の変化へ与える影響については十分検討はされていない状況である. そのため本研究では,流入角度と流出角度が等しい2種類の2次元翼列モデルにより翼面熱伝達率と翼面静圧の計測を実施すると供に,この翼モデルを対象にLES解析を実施することにより翼面境界層の挙動が熱伝達率に与える影響について検討した. さらに,タービン翼開発で高頻度に実施される翼外面熱伝達率のCFD予測という観点から,より解析時間を短縮する事が可能な定常RANS解析における3種類の乱流モデルについて,その予測精度の違いについて検討した. また,タービン翼内部の冷却流路は熱伝達率の向上を目的にリブなどの乱流促進体を備えた複雑な構造となっており、この流路を流れる空気は乱流促進体による乱れの増加や流路の折り返し部分で発生する偏流の影響を受けた複雑な流れとなり、流路内部の熱伝達率も複雑な分布となる。 この複雑な冷却流路内部の伝熱特性を明らかにするために、これまでに種々の研究が実施されているが実機タービン翼の内部冷却流路として頻繁に使用されるリブ付き冷却流路の折り返し部での流れの挙動とそれによる冷却流路壁面での熱伝達率分布の関係は必ずしも明らかになっていない. そのため本研究ではリブ付き冷却流路の折り返し部での伝熱特性を明らかにするため、この部分の形状を単純化した試験モデルを対象に感温液晶を用いた過渡応答法による熱伝達率分布の計測を実施するとともにRANS解析による流路内部の流れ挙動の把握および2種類のRANSモデルによる熱伝達率予測精度の違いにつき検討した. その結果,翼外面の伝熱特性の研究では以下の知見を得た.(1) 流入角度と流出角度が等しい翼モデルでも,翼面の速度分布が異なる場合は境界層の状態の差異により熱伝達率の分布が異なり,今回実施した検討では前縁半径が大きく翼面の曲率半径が小さいType1翼モデルの方が負圧面の乱流遷移の下流領域や,圧力面での剥離泡の下流領域での熱伝達率が高くなる事が確認出来た.(2) LES解析による翼面熱伝達率の予測では,負圧面の乱流遷移および圧力面の剥離泡の発生を再現することは可能であるが,前縁半径が大きく翼面の曲率半径が小さいType1翼モデルでは,境界層の乱れが大きくなる領域での熱伝達率の増加を過小評価してしまった.(3) LES解析により負圧面側では,遷移点付近から発生する小さな渦構造が翼面の高さ方向に成長し乱れが大きくなるのに対し,圧力面側では発生した渦がひも状に引き延ばされてGortler状渦が発生するといった乱れの生成,成長の様子が異なる事が明らかになった.(4) 今回検討した3種類のRANS解析では遷移モデルが組み込まれているTransition k-kl-ωとTransition SST乱流モデルは翼面の定性的な熱伝達率の変化を予測できたが,定量的な予測精度は必ずしも十分とは言えない. また、内部冷却流路における伝熱特性の研究では以下の知見を得た.(1) 各供試体形状の熱伝達率実験結果から,流路全体の熱伝達率の平均値はどの形状でも大きな差はないが,第2 流路の熱伝達率分布についてはPattern3 の形状が最も均一であることが確認できた.(2) 各供試体形状の圧力損失の実験結果から基本形状に対して,Rを挿入したPattern1で約17%,RとTVを挿入したPattern2,3では約29%の圧力損失低減効果を確認した.(3) 乱流モデルを変更したRANS解析結果から本供試体形状ではRNGk-εモデルによる熱伝達分布の結果が定性には実験値と一致する事が確認できた.また第1流路での対渦,曲がりでのディーン渦との混合,第2流路での渦消失について解析結果から確認し,実験で得られた熱伝達率分布との相関が得られる事を確認した.
Databáze: OpenAIRE