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本稿では,景気循環会計(Business Cycle Accounting)の枠組みを資産価格決定理論に拡張し,景気循環と資産価格変動を同時に分析するフレームワークを提示する。本稿が提示する分析手法では,景気循環と資産価格(地価・株価)の変動要因を効率性ウェッジ(集計生産性の歪み),労働ウェッジ(労働市場の歪み),投資ウェッジ(投資市場の歪み),政府ウェッジ(政府支出や外需による歪み),土地ウェッジ(土地市場の歪み),株式ウェッジ(株式市場の歪み)の6つの要因に分解し,反実仮想実験を通じて各要因の重要性を分析する。本稿では,1980年から2003年までの日本経済の景気循環・資産価格変動にこの分析手法を応用した。主要な結果は以下である。まずウェッジ間の独立性を仮定すると,資産価格変動には土地ウェッジ・株式ウェッジという資産市場に関する歪みが重要で,景気循環にとって重要な効率性ウェッジは少なくとも分析期間の資産価格変動にはほとんど影響がないことが分かった。一方で,ウェッジ間のスピルオーバーを考慮すると,結果は大きく変わる。とくに,1980年代後半の資産価格高騰は土地ウェッジ・株式ウェッジの改善の効果が大きいものの,1990年代の資産価格低迷は効率性ウェッジや労働ウェッジなど実体経済に関する歪みによる効果が大きいことが明らかになった。 |