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脳性まひに伴う言語障害はさまざまな臨床像を呈することはよく知られている。胎生期,周産期における感染や難産などによる脳障害後遺症と原因は同定されているものの,その障害部位や範囲,深さなどによって言語障害の臨床像が大きく異なるため従来は,障害の坩堝とか,ブラックボックスといわれてきた。しかし,近年の医学の進展によってその病相が徐々に解明されてきている。先行研究では,アテトーゼ型脳性麻痺は,錐体外路障害で知能障害はなく,言語理解は良好であるが,発声・発語器官の運動機能障害による言語障害を有することが多いと報告されてきた。だが,アテトーゼ型には,筋トーヌスのトーンの程度や分布,原始反射の関与などによる分類型があり,その臨床像は多種多様であるのが実情である。 このたび報告する事例は,著者が長年,言語指導に関与してきたアテトーゼ型脳性まひである。痙性を伴ったアテトーゼ型の脳性麻痺で,乳児期から重篤な口腔運動機能障害が認められた。言語発達は,言語表出の遅れが顕著であった。当報告は,生後3ヶ月から26歳までの長期間にわたる言語指導過程で次第に明らかになっていった言語障害の様相を,読み書き障害を中心にまとめたものである。 |