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1980年代におけるわが国企業の資本調達の際立った特徴として,いわゆるエクイティ・ファイナンス(新株発行を伴う資本調達)の積極的な活用を挙げることができる。とりわけ,転換社債と新株引受権付社債の発行による資金の調達にはまさに目を見張るものがあったといってよい。これらの社債が資本転換されて新たに株式の発行がなされると,それまでの株式所有構成は多かれ少なかれ変化せざるを得ない。とりわけ,こうした株式への転換等が短期間のうちに急激になされる場合には,その経営財務上ならびに所有構成上のインパクトはそれだけ大きいといえる。本稿は,こうしたエクイティ・ファイナンスと企業の株式所有構造の変化について,この間の事情が最も端的に現れると思われる大手建設企業の事例をとり上げて分析・検討を行うものである。立論の構成は二つの部分に分けられる。第1に企業における旺盛なエクイティ・ファイナンスの実態を把握すること,そして第2にそれが企業の株式の所有構造にどのような影響を及ぼしてきたかについて分析することがすなわちそれであるが,このうち本号においては,前者について考察を行っている。ここでは,80年代において日本のビッグ・ビジネス(大手建設企業)がいかに大量かつ急速にエクイティ債関連の資本調達を断行してきたか,したがってまたそれに伴っていかに大幅かつ頻繁に新株の発行を行ってきたかが明らかにされるであろう。 |