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本稿では,資産除去債務基準等における資産負債の両建処理の意味を伝統的な会計思考に基づいて吟味した。 資産除去債務基準等の概観し,資産除去債務基準等が以前の会計処理から改善した点と共に,資産除去債務基準等によって新たに生じた問題を確認した。すなわち,資産除去債務基準等によって,将来の除去支出が当初に貸借対照表に表示されないことおよび耐用年数後期に実質的に有形固定資産が貸記されるという問題は解消するものの,資産の取得原価および減価償却の概念の変容を招いてしまうという新たな問題が生じるのである。 本稿では,資産除去債務基準等で使用している概念の名称と内容が一致していないと考えることで問題は解消できると主張した。具体的には,資産除去債務基準等における減価償却や利息配分法の実質は引当金の繰入処理,減価償却費や調整額は引当金繰入額,そして,資産除去債務の相手勘定として借方に計上される金額は負債の評価勘定として計上されているとの解釈を提示した。これらの解釈において,資産除去債務基準等における資産負債の両建処理は,貸借対照表の情報提供と損益計算書の期間損益計算を両立させる方法として評価できる。 |