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日本の人口は2008年をピークに減少しており,人口減少を経験し始めた現在における都市圏の発展を把握することは,これまでの都市政策の評価を今後の政策への提言になると考えられる。本論文は高度経済成長期以降の日本の人口動態を都市圏の構造変化から把握することを目的とし,2015年時点の都市雇用圏187地区を基準とし,都市サイクル仮説に基づいて1980年から2015年の国勢調査データを用いて分析を行った。また,都市圏の特性を表す変数を用い上位・下位20%に属する指標数で都市圏の活動を考察することで,都市サイクルモデルでは把握できない都市圏内部の活動力を確認した。その結果,都市サイクル仮説で考えられているような循環的サイクルはおおむね存在せず,一般的に中心都市への集中が進んでいることが確認された。このような現象は中心都市における人口増加による絶対的な集中ではなく,郊外地域での人口減少による相対的な集中によるものである。都市圏単位で見た場合,大多数の都市で人口減少は中心・郊外どちらでも進行しており,特に1985年と2005年前後に衰退都市圏が大きく増加している。また,都市雇用圏は中心都市のDID人口が5万人以上の都市圏を大都市雇用圏,1万人以上5万人未満の都市圏を小都市雇用圏として定義されているが,これに基づき都市圏を分類し比較すると,大都市雇用圏は分散や成長が確認できる都市圏があるものの,小都市雇用圏は早い時期から既に衰退地域が多く存在している。特に,5万人以下の都市圏は2015年時点で全てが衰退都市圏に分類されている。都市圏の活動に関しては,大規模な都市圏ほど活力的な都市圏が多く,小規模な都市圏ほど非活動的な都市圏が多い。5万人以下の都市圏は全て非活動的な都市圏に分類された。都市サイクルモデルで衰退都市圏に分類されたものの,都市圏内は活動的な都市圏も存在した。 |