日本人学生を対象としたウルドゥー古典文学教材について

Autor: Tahir, Marghoob Hussain
Jazyk: urdština
Rok vydání: 2021
Předmět:
Zdroj: 外国語教育のフロンティア. 4:197-208
ISSN: 2433-9636
Popis: 教材研究
言語の学習は、文法の理解とともに、その言語圏での文化を教養として理解しておくことが必要であることは言を俟たない。ウルドゥー語文化圏では、日常の会話においても文学に関する話題が出ることが多く、古典詩は会話中や新聞、テレビ番組などで引用されることが多く、その教養は不可欠なものとなっている。本稿は、ウルドゥー語を学習する日本人学生を対象とした教材のうち、ウルドゥー古典文学を代表する詩人ミール・タキー・ミール (Mīr Taqī Mīr, 1723-1810) とミルザー・アサドゥッラー・ハーン・ガーリブ (Mirzā Asad Allāh Khān Ghālib, 1779-1869) に関する紹介文である。ミールとガーリブはウルドゥー古典詩、特に恋愛抒情詩ガザル (ghazal) において知られる詩人であり、ミールはウルドゥー文学史上、「デリー詩派第1期」「デリー詩派の黄金期」、もしくは「ミールとサウダー (Mirzā Muḥammad Rafī‘ Sawdā, 1718-81) の時代」と呼ばれる時代を担った詩人として知られ、ガーリブは「デリー詩派第2 期」すなわちムガル朝末期のウルドゥー古典詩最後の大詩人とされる。ミールの詩には狂おしいほどの恋情や悲嘆がリズミカルに描かれているが、そこにはスーフィズムの影響からの無常観もみられる。ここでは、これらの特徴を含む詩句を紹介している。ガーリブはウルドゥー語の詩作だけでなく、ペルシア詩や、その散文でも知られている。ガーリブは1857 年のインド大反乱時もデリーを離れることなく、デリーを離れた多くの弟子や知人らに大量のウルドゥー語書簡を送ったが、この散文が当時のイギリス人の目に留まり、その内容の面白さから「ガーリブの書簡」として知られ、イギリス人のウルドゥー語散文教科書となった。ガーリブの書簡は近代散文の一例として今日のパキスタンでのウルドゥー語教科書にも用いられている。かくして、ミールとガーリブの存在はウルドゥー語話者にとっては、「常識」となっている。ここでは、各詩人の生涯の概要と作品の特徴を、文法的に理解しやすい詩句を例示しつつ解説している。分量はそれぞれ1 回の授業で読む程度のものとし、語彙や文体も中級の学生が理解できるよう簡明なものとなるように心がけた。これにより、中級レベルのウルドゥー語運用能力によって、ウルドゥー文学の基本的知識と教養である古典詩人2 名について理解できることを目指す。
Databáze: OpenAIRE