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終戦後、日本人の死亡疾患は驚く様な変貌を示した。戦前50年余、日本人の全死亡の半数は伝染病であり、それに次いで全死亡の1/10が結核症であったが、結核については、昨年の本誌に記載した。終戦後に抗菌剤の大きな進歩と公衆衛生の整備と共に、この両者は共に、急激と言える勢いで減少していき、法律で各自治体が義務として設置・運営していた伝染病院の多くは自治体病院の内科の一部とされたし、多くの都市の郊外等に数多く建設された結核療養所は廃止され、一部は一般病院に転換された。戦後、暫くすると、日本人でも先進国と同様に、「がん」と循環器系の疾患(脳梗塞、心筋梗塞)などが、死因の主たるものとして増加を進め現在に至っている。その内で脳卒中は戦後10年余りの間は急速に増加したが、降圧剤の進歩等により1975年~1980年頃から徐々に減少の方向に向かっている。此処で著者らが専攻する呼吸器系疾患について考察すれば、「がん」の中で、肺がんが最大の死因であり、また、肺炎は今や、全死因の第3位を占めるに至った。また、数は少なくなっているものの、尚、肺結核はステロイド使用者や、抗がん剤使用者、或いは糖尿病患者などの易感染者には、今尚後を絶たず、安易に感染して、周囲の集団に危険を及ぼす恐れがあるので、注意を怠ってはならない。(著者抄録) |