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本稿は、山形市方言に見られる談話マーカ「ホレ・ホリヤ」「アレ・アリャ・リヤ」を取り上げて、その談話的な機能を分析することを試みる。その特徴をまとめると、次のようになる。(a) 山形市方言には、一種の談話マーカとして、ホレ・ホリャおよびアレ・アリャ(>リャ)といった形式がある。リャ以外は文頭・文中・文末いずれにも現れる。リャは文頭以外に現れる。(b) ホレとホリャは、話し手が聞き手の注意や認識・記憶を喚起しようとする場合や、聞き手に行為を促す場合に用いられる。(c) 独立形式のアレは、事態の生起に対する驚きを表す場合と、指示詞として話し手の記憶や聞き手との共有情報を指し示す場合がある。一方独立形式のアリャには、前者の用法はあるが、後者の用法はない。ただし聞き手の記憶を喚起するために、指示的に使われる場合がある。(d) 従属形式としてのアレ・アリャ(さらにリャ)は、基本的に、独立形式のアレ・アリャの用法を引き継いでいる。(e) ホレと指示的に使われた場合のアレの違いについては、ホレが、聞き手が(話し手と経験を共有していても)気づいていないことに注意を求める形式であるのに対して、アレは、話し手のみの経験、あるいは話し手と聞き手が共有している経験や知識を前提として指し示すものである。(f)のホリャと指示的なアリャについても、同様のことが言える。(g) ホレとホリャの間には、ホリャがハを抱合しているといった意味・機能上の違いが観察されるが、アレとアリャの聞にはそのような違いはあまり観察されない。 |