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斜面の安定問題を考える場合, 特に表層崩壊においては, 土層が不飽和の状態から, 降雨によって多量に水を含んだ状態, とりわけ飽和状態に達した時に, その剪断強度が, 低下することが重要な問題点であると考えられる。そのような観点から, 土の剪断強度が土中の含水状態によってどのように異なるのかを調べるために幾つかの基礎的な実験を行ってきている。本報においては以下の諸点について考察を行った結果を述べる。(1) 砂質土のモデルとしてガラス・ビーズを用いて剪断試験を行ない, 含水状態の変化に伴う剪断強度の変化の定性的な傾向を明らかにした。(2) 表層崩壊を想定した低い垂直応力の下で標準砂の剪断試験を行ない, 低い垂直応力の下では, 不飽和の状態から飽和の状態に変化することにより剪断強度 (主として見掛けの粘着力成分) は顕著な低下を示すことを検証した。(3) 発生頻度の高い, 表層崩壊を想定して, 適当なすべり面を仮定し, 土の剪断強度を何段階か変えて安全率の試算を行った。その結果は, 土層が不飽和から飽和の状態に変化することにより, (2) で検証された見掛けの粘着力成分の低下が安全率の低下に大きく効いていることを示している。 |