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本稿は,電力域外融通が,発電コストおよびCO2 排出量に与える影響を分析したものである.まず,数理計画法を用いて,連系線でつながった電力市場における発電事業者の生産意思決定プロセスを分析した.さらに,日本の電力会社のデータを用いたシミュレーションを行い,電力取引が我が国の発電コストやCO2排出量に与える影響を定量的に分析した.東京電力と北海道電力のデータを用いた数値シミュレーションの結果,電力取引の拡大は発電コストの低減をもたらすことが明らかとなった.これは電力取引によって,発電単価の安い石炭火力発電所の利用率が拡大し,発電単価の高いガス火力や石油火力発電所の利用率を引き下がるためである.しかし,実際には連系線の容量不足によって,両社の設備の最適利用が妨げられていることが示された.また,石炭火力発電所の利用率の拡大はCO2排出量の増加をもたらす.これは,現行の地球温暖化対策税が低率であり,炭素税を含んでも,石炭火力発電の発電単価がガス火力発電と比較してコスト優位にあるためである.したがって,地球温暖化対策税の引き上げが電力取引にどのような影響をもたらすかについては,今後追加的な分析が必要である. |