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散発性の大腸癌の発癌機構には、'adenoma-carcinoma sequence'(ACS)と'de novo'型発癌の2の経路が考えられている。ACS発癌機構は一般的に受け入れられ、実際、様々な癌遺伝子や癌抑制遺伝子による多段階発癌の過程が明かにされた。しかし、'de novo'型大腸癌の発生については、今だその発癌機構が殆ど明らかとなっていない。'de novo'型発癌は、肉眼的にも明瞭な腺腫から発生するACSと異なり、正常大腸粘膜から直接に癌の発生をみるものであるので、その初期変化の病像を得ることは困難である。しかし、その変化を捕えることができなければ、'de novo'型発癌機構の解明は不可能であると考えられる。glycogen phosphorylase(GP)は嫌気的解糖系の主役を担う重要な酵素である。その活性は正常の消化管粘膜においては殆ど検出されないが、胎児期の消化管粘膜や消化器癌においては強い発現がある。またGPは筋、肝、脳型(胎児型)(BGP)の3種のアイソザイムがあることが知られており、そのうち胎児と癌に発現するものはBGPである。以前より当教室では、消化管粘膜の増殖細胞群に注目し研究を行っており、増殖細胞にBGP陽性の腸上皮化生が腸型胃癌の前癌病変であることを明かにした。今回の研究の目的は、大腸癌におけるBGP発現を検索すること、ACSおいてBGP発現の時期をp53蛋白の過剰発現と比較検討すること、'de novo'型大腸癌の前癌病変を探究し、担癌大腸粘膜におけるBGP発現を検討し、BGP発現が散発性大腸癌発癌過程のマーカーとなりうるかを検討することである。 |