骨細胞は低出力超音波パルスによる骨折治癒において主に応答する [全文の要約]

Přispěvatelé: 田村, 正人, 網塚, 憲生, 飯村, 忠浩, 北川, 善政, 佐藤, 真理
Jazyk: japonština
Rok vydání: 2021
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骨組織においてメカニカルストレスは,骨のリモデリングを制御し骨量の維持に寄与することが知られている。しかし,骨細胞におけるメカニカルストレスに対する細胞応答,細胞内情報伝達および細胞間シグナル分子の産生など詳細な分子メカニズムについて明らかではない。超音波刺激はメカニカルストレスの一つであり,低出力超音波パルス(LIPUS)は骨折治癒を促進するために臨床的に利用されてきた。これまでの基礎研究からLIPUSは,骨折治癒過程のさまざまな細胞に作用することが報告されている。しかし,LIPUSが骨折治癒を促進する際に,骨細胞がどのような役割を果たすかは明らかではない。そこで,本研究では骨細胞に対するLIPUSの作用について明らかにすることを目的とした。まず,骨細胞を欠いたメダカと骨細胞を有するゼブラフィッシュを用いて骨折治癒過程とLIPUSの効果を調べた。各魚の尾骨を骨折させLIPUSを毎日照射した。LIPUS刺激によりゼブラフィッシュでは骨折治癒が促進されたが,メダカでは促進されなかった。そこで,骨細胞に対するLIPUSの作用を明らかにするため,MLO-Y4細胞を培養し,次世代シークエンサーを用いRNAシークエンス(RNAseq)を行った。全16476個の遺伝子のうち,179個の遺伝子の発現量がLIPUS刺激により有意に変化した。そのうち発現上昇した遺伝子が93,発現低下した遺伝子が86であった。DAVIDを用いた解析から,免疫、分泌、転写に関連する遺伝子が同定された。次に,これらの解析で上位のクラスターに分類された遺伝子の発現量を,ゼブラフィッシュおよびメダカの尾ヒレを骨折後LIPUS刺激を与え1日目と7日目の尾ヒレからRNAを抽出した組織において,リアルタイムPCR法を用いて調べた。ゼブラフィッシュの尾ヒレの骨折部位における,各クラスターに分類された遺伝子の発現レベルを測定したところ,Egr1,Egr2,Junb,Foxq1,Nfatc1など転写因子の遺伝子発現量が有意に変化した。一方,メダカではこれらの転写因子の遺伝子発現量に変化は見られなかった。本研究から,骨細胞を有するゼブラフィッシュにおいてLIPUSの骨折治癒促進が認められたことから,骨細胞は低出力超音波パルスによる骨折治療において主に応答する細胞である可能性が考えられた。また,Egr1,Egr2,Junb,Foxq1,Nfatc1などの転写因子の遺伝子発現の変動が骨細胞におけるLIPUS応答において重要な役割を果たしているという新たな知見が得られた。
https://www.lib.hokudai.ac.jp/dissertations/copy-guides/
(主査) 教授 田村 正人, 教授 網塚 憲生, 教授 飯村 忠浩, 教授 北川 善政, 准教授 佐藤 真理
歯学院(口腔医学専攻)
Databáze: OpenAIRE