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筆者は森林の多様性を表現するために二つの統計的方法を用いることを提案し, 実際の伐採作業の二つの場合について, その作業功程と作業地の多様性との関係を解析してみた。その二つの統計的方法とは, Component Analysis 法と Canonical Analysis 法のことである。作業地の多様な様相は, Colnponent Analysis により, 二つの例において, 全く同様な五つの統計的に独立な概念的特性の型にまとめることが出来た。その五つの概念的特性とは, 立木分布状態, 伐採木の大きさ, 樹形, 林形, 平均勾配である。そうして, これらの特性の作業功程への影響として, 次のような結果が得られた。i) 伐木作業について この伐木作業とは, 天然スギの伐倒・枝払・剥皮を一まとめにしたものであるが, この作業の実働1時間1人当り出来高が, 立木分布状態と伐採木の大きさによって影響を受けた。この実働時間当り出来高は, 立木の分布が密である程, また, 伐採木が平均的に大きい程, 多くなり, 一方, その反対の場合に少くなるという傾向があった。また, この伐木作業の実働率は, 樹形といくらかの関連があり, 樹形の良い場合, すなわち, 枝下が高く, 枝数の少いとき高率を示し, その逆の場合には低くなった。ii) 玉切作業の場合 上に述べた五つの特性は, いずれも玉切作業の実働1時間1人当り出来高に対して有意な影響が見られなかった。しかし, この実働率は, 立木分布状態及び伐採木の大きさと関連があり, 立木分布が密である程, また, 伐採木の平均的大きさが小さい程, 高率であり, その逆の場合に低くなる傾向あった。以上の結果は, いずれも京都大学芦生演習林の一部で行われた作業について出て来たものであるが, 筆者は, 上のような結果, 特に伐採地の多様性がいくつかの概念的特性によって把へられるという結果は, もっと一般的に成立しうるのではないかと考える。一方, Canonical Analysis による分析は, 森林の多様性と作業功程との関係を, もっとも数学的に簡単で, かつもっとも強い相関をもつ型で, 取り出してくれるが, 前の方法のような意味づけが困難なので, いくぶん, この例の場合, 取扱いに面倒なように思われた。 |