神聖ローマ帝国の千年王国創設における'新理念'に関する研究 - バンベルク司教座をめぐるアンデクス・メラン家の興亡から - : 日本西洋史学会第62回大会
Autor: | Kawanishi, Takao |
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Jazyk: | japonština |
Rok vydání: | 2012 |
Popis: | キリスト没後千年,いわゆるミレニアムMillenarismusを迎えようとしていたヨーロッパ・キリスト教世界は,世紀末の天変地異や争乱そして,その後に出現すると聖書に記された千年王国tausendjähriges Reichの到来に備えていた。当時の神聖ローマ帝国Sacrum Romanum Imperiumは,帝国の中央に位置し,ローマと同じく7つの丘を持つドイツ中部のバンベルクBambergに千年王国の中心都市を築こうとしていた。本論は,このミレニアムから13世紀にかけて,バンベルクに描かれた千年王国の理念とその変遷について考察しながら,後の十字軍につながるこの理念に対して挑まれた"新たな理念"をめぐる興亡について論及したものである。ドイツの山岳丘陵地帯に位置するバンベルクは,古来よりローマ帝国の支配を受けず,ドイツ・ゲルマンの地として水運利用によって栄えたが,11世紀初頭の"聖者王der Heillge"ハインリヒ2世Heinrich II(973-1024, ドイツ王1002-, 神聖ローマ皇帝1014-)による司教座の創設(1007年)によって,千年王国たる神聖ローマ帝国の中枢としての役割が目指された。その"当初の理念"はキリスト教世界の不滅や絶対性が強調されるなど,後の十字軍による聖地奪還といった戦争を正当化,主導することにつながった。本論では,この十字軍に対し,当時のヨーロッパ屈指の名門アンデクス・メラン家Haus Andechs Meranienが,十字軍遠征の中心となっていたバンベルク司教座を刷新し,新理念の下に千年王国を導こうとした動きに焦点を当てている。当家は,帝国の中枢からヨーロッパの陸と海の交易の要衝を広く支配し,フランスやハンガリーなどの帝国周辺の強国や十字軍騎士団と連携をはかる一方,ローマ教皇庁そしてエルサレム王国,東ローマ帝国などからバンベルクに様々な文物や情報をもたらして司教座の運営に関与を深め,12世紀後半には当家からバンベルク司教を輩出するに至った。続く13世紀前半には司教座大聖堂Bamberger Domを改修し,現存する4つの巨大尖塔を完成させたほか,聖堂内にはアンデクス・メラン家の最高傑作といわれる"バンベルクの騎士Bamberger Reiter像"を据えた。さらに,バンベルク近郊にバイロイトBayreuthなどの新都市を建設し,司教座の防衛と東西交易の拠点とした。本論では,このようなアンデクス・メラン家の目指した神聖ローマ帝国における千年王国の新理念と,その実現に向けた興亡を考察するとともに,当家が数百年にわたる国際宗教戦争となった十字軍時代をいかに終息させようとしたのかを,現存するバンベルク大聖堂そして"バンベルクの騎士"が後世に伝える精神性と絡めて言及したい。 日本西洋史学会第62回大会一般研究発表(2012年5月20日(日), 於:明治大学)発表論題・要旨 |
Databáze: | OpenAIRE |
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