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動脈壁における血栓は, 粥状硬化, 心筋梗塞ならびに脳血管障害の発症と密接な関連を有しており, 内皮細胞の傷害による血小板の粘着・凝集を基盤として形成される. したがって, これらの発症の追求にあたって, 血小板凝集に及ぼす血管壁成分の影響を把握することは重要と考えられる.そこで, ヒト大動脈内膜ならびに中膜抽出液の血小板凝集に及ぼす影響を検討した.死後5時間以内に得られたヒト大動脈の, 正常部分と fibrous plaque 部分の内膜ならびに中膜を剥離し, これらとpH7.4の0.15M NaCl (1:5W/V) とを4℃の状態で24時間 gentle shaking 後1,000G 30分間遠心して, それぞれの中間層を分取した. さらに, 沈殿部分にpH7.4の0.15M NaCl (1:5W/V) を加えて homogenization 後, 1,000G 30分間遠心し, それぞれの中間層を分取した. 分取液について, 血小板凝集に及ぼす影響を追求した.正常ならびに fibrous plaque 内膜ならびに中膜の gentle shaking による抽出液は, それ自体には血小板凝集惹起作用はなかったが, ADPによる血小板凝集を抑制し, epinephrine ならびに norepinephrine による血小板凝集を亢進させた. collagen による血小板凝集には, ほとんど影響を与えなかった. homogenization による抽出液には, すべて, それ自体に血小板凝集惹起作用がみられた. この homogenization による抽出液の血小板凝集惹起作用は, 凝集曲線から考案した結果, collagen が抽出されたことによる凝集と考えられた.gentle shaking 抽出液中のADPならびに catecholamine による血小板凝集に影響を与えた物質が何であるかを明らかにできなかったが, catecholamine が多い状態では血栓が形成されやすく, 動脈硬化, 心筋梗塞ならびに脳血栓等の発症とも深い関連のあることが示唆された. これらの物質の追求は, 血栓を基盤として発症する疾患の予防や治療の一助になり得るであろう. |