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東京大学第2内科12年間の入院7,680症例のうち, 入院直後心電図を記録しPQ時間を測定しえた6,289例につき, 加令, 疾患の房室伝導時間に及ぼす影響を調べ, 次の所見を得た.1) 全症例について, 房室伝導時間は男性では10才代0.155±0.026秒に始まり, 70才代0.179±0.031秒と加令とともに次第に延長する. 各相隣れる年代間には有意の差はないが, 10才代, 20才代と60才, 70才代にはその差が有意である. 女性では男性より短く, 50才代まで変化は少ないが60才代以降で延長する. 男性と同様に, 10才代, 20才代と60才代, 70才代とはその差が有意である.2) 疾患別では, 対照群に比して各種心疾患群でPQ延長を認めた. また男性では, 糖尿病, 胆のう症, 高血圧で各年代にわたってPQ延長を認めた. 各疾患の各年代別平均値の検定を試みると, 先天性心疾患, 弁膜症, 高血圧を伴う虚血性心疾患と対照群の間に, 有意の差が認められた. 女性では疾患別には先天性心疾患, 弁膜症, 虚血性心疾患, 高血圧を伴う虚血性心疾患, 高血圧性心疾患が, 対照群に比し有意に延長を示した.3) PQ時間と他の心電図所見の関係を検討し, 左軸偏位, 右脚ブロック, ST低下, 陰性T波が有意の関係をもつものと認めた.4) 心筋硬塞とPQ時間の関係では, 壮年者後壁硬塞でPQ時間の延長を示すものが少なかった. 硬塞の際房室伝導時間を決定する要素は, 硬塞部位のほかに加令, 重症度による影響が大きい. |