心理療法における「主体」をめぐる一考察

Jazyk: japonština
Rok vydání: 2022
Předmět:
Zdroj: 奈良女子大学心理臨床研究. 9:43-51
Popis: 奈良女子大学心理臨床研究 第9号 第1部 研究論文
本稿では,他者とは独立していて一貫性を持ち,統合された「主体」がもはや前提とはならなくなってきている現代で,心理療法における「主体」をどのように捉えられるかについての考察を試みた。まず,他者とは独立した「主体」や「心」を前提としない理論を基盤に持つ心理療法について検討したところ,それらには独立した「主体」や「自己」に執着せずに距離を取ろうとするという共通点が見出された。そして,神経生理学の先行研究の知見から,「主体」は実は錯覚であることが示唆されたが,錯覚という心理学的現象であるからこそ,心理療法においてはそれを作り出していこうとすることも必要であると論じた。また,その「主体」の成立には「手応え」が必要であること,「主体」は多面的な自己をつなぐ「点」となりうることについて論じ,最後に「主体を育てる」ということについて,主体感を持つことのできる状況のパターンの広がりとして捉える視点を提起した。
Databáze: OpenAIRE