バガスピスを用いた抗菌性機能紙の開発に関する研究

Jazyk: japonština
Rok vydání: 2014
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Popis: 機能紙は,様々な産業分野で開発がなされているが,機能発現のために,合成繊維や化学薬品,樹脂など石油資源に依存した原料で構成されている場合が多い.しかしながら,石油資源は有限であり,今後長期間に亘って,安定的に供給されるものではない.一方で,天然繊維を含むセルロースは,地球上でもっとも豊富な資源とされており,これを用いて機能紙を作製できることは,生活の質を維持しながら,脱石油資源を目指すために必要であると考えられる.また,抗菌加工製品は,特に日本において,清潔志向の高まりから一般生活にも浸透しており,台所用品や風呂用品ならびに肌着,下着等で使用されている.さらには,病院での免疫低下患者におけるメチシリン耐性黄色ぶどう球菌(MRSA)などによる院内感染が問題となっている.本研究は,そのほとんどが天然材料であり,未利用資源であるバガスやホタテ貝殻焼成粒子から構成され,人体のみならず地球環境にも配慮した抗菌紙の開発ならびに評価が目的である.サトウキビの搾りかすであるバガスの内径部にあたるピスは多孔質構造を有しており,機能性粒子を付着させる基材として活用することができる.機能性粒子の1つとして笹の葉粒子を粉砕,その後45m以下,45-106および106-147mの3つの範囲に分級し,濃度(10,20,50g / l)およびピス長さ(0.5, 1.0, 1.5cm)の条件において,付着方法について種々の条件にて,バガスピスに付着させ,バガスピスの孔内により多くかつバガスピスから離脱しにくい条件を見出した.その結果,バガスピスへの笹の葉粒子付着率は,脱気処理を行い,粒子径を小さく,粒子流動に必要な水量は少なく,かつ粒子濃度は高いほど,ピスのより内部に存在する笹粒子が増加し,付着率が高を向上できた.角型手すき用抄紙機を用いて,バガスピスにホタテ粒子を付着させたホタテ粒子複合ピスおよびバガスパルプを水で満たされた抄紙機のタンク中に投入後,撹拌直後にタンク下方から水抜きを行い,タンク下部に設置したワイヤーメッシュ上に原料混合物を積層させ、乾燥して抗菌紙を得た.ホタテ粒子複合ピスは,孔内にホタテ粒子だけでなく空気も含んでいるため,抄紙時に抄紙機タンク内の水面に浮紙させることで,最終的に紙表面のホタテ粒子複合ピス濃度を高くすることが可能であった.また,紙中にホタテ粒子複合ピスを比較的均一に分布させるためには、ホタテ粒子複合ピスを水中で脱気処理し,孔内の空気と水を置換することで作製可能である.ピスを用いない場合やピスとホタテ粒子を個別に単純にパルプと混抄した場合と比較し,ホタテ粒子複合ピスを用いた機能紙は3倍以上のホタテ粒子を歩留めることができた.作製した抗菌紙は,紙の表面により多くのホタテ粒子複合ピスが配置されるため,紙層内部での水素結合の阻害をしにくくなり,引張強度の低下を引き起こしにくく,またバガスパルプの坪量が小さいほど,緩やかであった.抗菌紙の作製条件によりホタテ粒子複合ピスの分布やホタテ粒子濃度を変化させたホタテ粒子複合ピスを用いた抗菌紙の抗菌性を評価した.対象の細菌は,グラム陰性の大腸菌およびグラム陽性のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)であり,抗菌性試験は各サンプルをバイアル瓶に入れ,オートクレーブに入れ高圧蒸気殺菌後,0.7~3×105個/mlの菌液を接種し,37℃にて所定時間培養した.菌数は,菌液接種直後および培養後に生理食塩水 20 mL を加え,手振り(振幅 30 cm,30 回振とう)で各検体から菌を洗い出し,ニュートリエント培地あるいはトリプチケースソイ寒天培地を用い,37℃にて48時間,混釈平板培養を行い測定した.ホタテ粒子複合ピスを用いた抗菌紙の抗菌性は,両細菌に対しての抗菌性が確認でき,脱気処理をしていないホタテ粒子複合ピスを用いることによって,脱気をしたホタテ粒子複合ピスやピスを用いない場合ならびにピスとホタテ粒子を個別に単純にパルプと混抄した場合と比較し,MRSAに対しての即効性が確認できた.本研究によって,バガスピスとホタテ粒子の組み合わせだけでなく,多孔質構造を有する植物と機能性粒子の複合物を用いることで,化学薬品の使用を最小限に留めながら,より多くの機能性粒子を機能紙中に歩留めることができるとともに,紙中の機能性粒子の分散状態を変えることが可能になり,様々な機能紙を作製するための基礎になると考えられる.例えば同量の機能性粒子用いる場合においても表面の粒子濃度を高めることや機能性効果の持続時間をコントロールすることが可能となるものと期待できる.
Databáze: OpenAIRE